インクルーシブ教育とは

1月17日のギャラリー古籐(江古田)「絵本から見る『子どもの権利』展では、早稲田大学川名はつ子教授と「アイちゃんのいる教室」の作者、高岡正樹さんとのギャラリートークがありました。

「アイちゃんのいる教室」はダウン症であるアイちゃんが過ごした通常学級での小学校生活を、6年間取材し、写真と絵による三部作としてまとめたものです。

高岡さんはアイちゃんが低学年のうちは級友と打ち解け元気いっぱいだったけれど、学年がすすむにつれ同級生と学習面や集団行動での軋轢が生じたことなど、日本でのインクルーシブ教育の実践について語りました。

「アイちゃんのいる教室」を読むと、高学年になると「アイちゃんがいると班行動で遅れる」「球技で勝てない」となっていきます。抽象的な思考や表現でも、同級生との違いを感じるようになり、6年生を終えての結論は、中学からは特別支援学級への進学を選択しています。

川名教授はイタリアに訪問した折に出会った日本人家族を取材しました。大学教授一家の娘さんがダウン症ですが、父親の赴任に伴ってイタリアに渡り、父親が離任・帰国した後も、家族でイタリアで暮らす姿が報告されました。学校でも家でも、手厚いサポートを受け自宅で暮らしていることを報告しました。サポートとはいえ、支援員が派遣されますが、「全部やってあげる」のではなく、障がいに合わせた配慮やトレーニングをしています。

お二人の話から、「障がい」「子どもの権利」に対する日本とイタリアの現時点での捉えかたの違いがわかりました。

 

日本では大多数に当たる健常児の権利が、優先されている印象です。

それに対しイタリアの障がい児教育では、0歳からの保育園から大学まで保育・教育の全ての学校段階でインクルーシブ教育が保障されています。そのバックボーンには、障がいがあっても社会が障がい者に配慮することで地域での生活が可能で、当然の権利であると考えられています。

日本のインクルーシブ教育は、「障がい者差別解消法」の成立後も、特別支援学校をはじめとする従来の施設を活用した分離別学制度です。実際にアイちゃんのように小学校では通常学級に通っても、中学校はあきらめてしまうことも多いのです。

ほんとうの意味での「インクルーシブ教育」とは?障がい者への特性に合わせた「合理的配慮」とは?

現場や当事者の声を聞き、提案していきます。